その人は自分のことをあまり話さないような人だった。


 一個差の年齢差はとてもつもなく大きく感じたし、なんの部活をしているのか、そもそも部活をしているのか分からなかった。


 それなのに一緒に帰っていたのは、きっと最初の出来心の延長戦。

 わたしと先輩は電車通学で、駅が二駅しか離れていなかった。

 
 それから2年間、テストで早く帰れる日も、先輩が卒業するまでそれは続いた。

 学校の話や家族の話ではなく、通学路のよく見かける犬の話や、秋になると道に沿って咲き乱れるコスモスの話など、当たり障りのない話。

 だから誕生日も、家族構成も、普段仲良しな友達のことも、部活も知らないままだった。