静は単独公演のみならず、三神メイサとのデュオでも大きな実績を上げた。国際コンクールにおいて優勝し、世界の舞台で通用する演奏家として名を馳せたのだ。

静とメイサ、二人の偉業は大きく、連日ニュースが飛び交う。

『静とは初めて演奏したときから運命を感じていました。これからも長い付き合いになると思います』

カメラ目線で自信満々にコメントするメイサに数々のフラッシュが飛び交う。

『桐谷さんも一言コメントをお願いします』

『そうですね……。このように受賞できたこと、光栄に思います』

二人が微笑み合う姿は多くのメディアに取り上げられ、SNS上では「お似合いの二人」とまで囃し立てられていた。

そんなものを目にしてしまった春花はドキンと心臓が変に脈打つ。

静とメイサがそんな関係ではないことはわかっているし、静からもいつだって「愛している」と連絡が来る。もちろんその言葉を信じているのだが、さすがにこれだけ話題になると精神的に響くものがあった。

「静、おめでとう!ニュースで見たよ!」

『ありがとう。春花に一番に伝えたかったけど、メディアに先を越されたな』

「それは仕方ないよ。今や日本を代表するピアニストだね」

『まだまだこれからだけどね。でも一歩踏み出せたかな』

「これからどんどん有名になるんだろうね。なんだか静が遠く感じられるなぁ」

『俺はいつだって春花の元に飛んでいくよ』

「そういう意味じゃなくて、雲の上の人ってことだよ。本当に、おめでとう。店長なんて大盛り上がりでCD平積みしてたよ」

『日本に帰ったらお礼しに行かないとね。春花ごめん、今から祝賀会があるんだ。また連絡するから』

「うん、わかった」

『春花』

「うん?」

『愛してる』

「私も、愛してるよ」

電話越しの静はいつも通り優しく穏やかで、モヤモヤしていた春花の心もすうっと晴れていく。声を聞くだけで安心できるなんて、単純極まりない。そんな自分に春花はクスクスと笑った。