流星「よいしょっと!」

俺は母親が使っていた食器や調理器具を洗ったり磨いたりしていた。

流星「しっかし、しばらく使っていなかったって言ってたけど全然綺麗だな」

母親は綺麗好きで物を大切にする人だった。

流星「よし!こんなもんでいいか!あとはー、外壁と看板の塗装と店内の掃除とかだな」

母親は去年の夏くらいから体調が悪くなり、店はずっと閉めてたままだった。

元気になったらすぐ店を開けたい!と母親は何度も言っていた。

流星「こんな形でこっちに帰ってくることになるとは思わなかったけど、案外帰ってきて正解かもな〜」

俺は背伸びをするとお腹がぐーっと鳴った。

流星「腹減ったな、何か作るか」

俺は小さい時から母親が料理を作る姿をずっとそばで見ていた。

だから店のメニューにある料理は一通り頭に入っている。

俺は慣れた手つきですぐに親子丼を作った。

流星「この料理が母親の手料理の中で一番好きだったな」

この親子丼の匂いを嗅ぐだけであの母親の太陽のような笑顔が脳裏にうつる。

流星「いただきます!」

口の中に懐かしい味が広がる。

流星「うんめ〜!」

ガタン!

親子丼に夢中なっていると、急にドアに何かがぶつかる音がした。

流星「うわ!びっくりした〜!!…なんの音だ?」

(不審者か?それともただの風の音か?)

俺は恐る恐るドアを開けた。

ガラッ

そこにはドアのそばで横たわっている金髪の長い髪をした女の子がいた。

流星「え!誰っ!?てか死んでる?」

俺はそっと女の子の肩に触れた。

流星「…おい、大丈夫かよ?」

??「…ん〜、お腹すい…た」

流星「え、あ、お腹空いてるのか?お前」

すると女の子は震えながら起き上がり、閉じていた瞳を開けた。

(うわ、宝石みたいな澄んだ空色の瞳)

??「うん……お腹すいた」

女の子は大きな瞳で俺を見て、何かを訴えてきている。

(……何か食わせろってことか?)

流星「どこの子供かしらねーけど、自分の家があるならちゃんと家帰って飯を食え!」

(こんな訳分からねー子供に飯を作るなんてありえない)

??「…いえ?……私の家は見つからないの」

流星「見つからない?まさか家出か?」

??「…ちがう。気づいたらここにいて…ここがどこなのかもわからないの」

(おいおい、待てよ……まさか迷子?)

流星「…帰る家がわからないのか?」

??「……そう」

するとグーっと女の子のお腹が鳴った。

流星「はぁ〜、わかったよ。とりあえず飯を食え。そんで後で警察のところに行くぞ」

俺は仕方なく女の子を店の中に入れた。

そして残っていた親子丼を温め直して、その子にあげた。

??「…いただきます」

流星「おう」

女の子は目をキラキラさせながら親子丼をがむしゃらに食べ始めた。

(相当お腹減ってたんだな、よく見れば顔も体も痩せこけているし、服も薄汚いな)

流星「……なぁ、自分の名前くらいは覚えているのか?」

花梨「……かりん」

流星「そうか、花梨か」

(名前は覚えてるってことは自分の家だけ覚えてないんだな)

いつの間にか花梨は親子丼を食べ終わっていた。

そして、俺たちは近所の交番に向かった。