エスパーかと思うくらい、いつも私より先回りした行動をしてくる。
ソフィアは「それがメイドの仕事です」と言っているけれど、それができる人はベテラン中のベテランしかいないだろう。メイドのエキスパートだ。
私が指示を出したあと、ディナードはすぐに部屋を出ていく。
テーブルの上にまだ残っているマドレーヌは──、行きながら食べよう。
お行儀の悪いことなので、叱られるかもしれないけれど残すのはもったいない。
それと、さすがに紅茶はもっていけないので、残念だけれどこちらはまた今度だ。
名残惜しい気持ちのままテーブルの上から視線を外し、私は身支度をするためドレッサーの前に座った。
「ソフィア、いつも通りよろしくね」
「かしこまりました」
ソフィアの手の捌き方はいつもすごい。
鏡越しでは何をどうやっているのか全く分からない。
私のくせ毛たっぷりのブロンドヘアに、優しく櫛を通していく。



