チェスター家と言えば、公爵の家だ。
つまり、私よりも身分は上。許可もなく頭を上げることは、この貴族社会では許されない。
お父様だけなら私は仕事に行ったけれど、さすがに公爵様がいるのに出かけるなんてことはできない。
さっきお父様が私を呼んだということは、私も聞かなくてはいけない内容なのだろう。
ただの伯爵令嬢である私に拒否権なんてものはない。
いくらお仕事だと言っても、本来私がやっているはずのない事だ。断る適当な理由も付けられない。
「シェリー、出かけるところだったのは悪いけれど、応接室に来てくれるかい? ディナードはマリエルを呼んできて」
いつの間にかこの場に来ていたディナードが、「かしこまりました」と返事をして屋敷の奥に入っていった。
ちなみに、お父様が言ったマリエルというのは、お母様のことだ。
ここまでされたら、本格的に行かないという選択肢はなくなってしまった。
まぁ、行くしかないのだけれど……。



