王都騎士団で黒の騎士服と言ったら、まさか……。
失礼になるとは分かっていても、お客様をまじまじと見てしまった。だって、この人は──。
「シェリー、この方は王都騎士団の副団長で、チェスター家の次期当主でもあるエドアルド様だ」
やっぱりっ! 色々な令嬢達の間で有名になっている人だ。
あまり社交界にでていない私でも知っているくらいの有名人。
いつもクールで、護衛中の彼は素敵だと話題になっている。しかもたまに見る、微笑んだ顔は卒倒するものだとか……。
お父様に直接紹介されたからには、私も挨拶を返さなくてはいけない。
サッと視線を外してから、わたしは優雅にカーテシーをした。
幼い頃から慣れ親しんだその動作は、最近していなくてもスムーズに出てくる。
「ごきげんよう、エドアルド様。わたくしはハイド伯爵家の娘シェリルと申します」
「シェリル様、顔を上げてください」
私はエドアルド様がそう言ってから、下げていた顔を上げた。



