【電子書籍化】いきおくれ令嬢は、クールな騎士様の溺愛に翻弄されています




「ごめんなさい、お父様。せっかくのお誘いなのですが、わたくし急いでむ──」



村に行かなくては行けないのです──。と言おうとしたのに、お父様の背後から入ってきた人を見て口が止まった。

だれか、ここで止めた私の口を褒めて欲しい。


お客様に知られるなんて、あってはないことだ。たぶんセーフだよね……。



「い、急いで行かなくてはいけない場所があるのです」



そう言い直したのだけれど、私の視線はお父様の背後に釘付けだ。


お父様よりも高い身長のお客様。スラッとしていて整った顔をしている。

お兄様に見慣れている私でもかっこいいと思ってしまう程に。


サラサラした黒髪は、くせなんてどこにもなく丁寧に整えられている。

そして、ロイヤルブルーの瞳が私を見ていた。


着ている服もとても似合っている。黒のマントに騎士の服──、えっ? 騎士の服? 


よく見てみると、左の胸元には王都騎士団のエンブレムが付いている。