腹ごしらえをしてほんのり満たされたミーナは、親しい友人達に失恋の話をすることに決めていた。彼女のことを自分勝手だと蔑まれたり、嗤われたりすることを覚悟して。

「実はね、私、ヴィオルドのことを好きになっていたの……」

 彼女は自分が抱いた醜い嫉妬、自分勝手な同情の押しつけ、それで彼を苦しめていたことを含めてこれまでのことを洗いざらい話してしまった。アデライドとレネは笑うでもなく、責めるわけでもなく、黙って静かに聞いていた。

 彼女が全て話し終えたあと、それまで一言も発しなかったアデライドとレネは席を立ち上がり二人でミーナを抱きしめた。思わぬ行動にあたふたしてしまう。

「え……? 私のこと、最低な女だと思わないの……? なんで?」
「好きな人を助けようと薬まで用意して、最低なわけなかろう」
「嫉妬だって、誰にでもあると思うよ? ミーナはそれでフィルを傷つけたワケじゃないんでしょ?」

 彼女を責めるどころか、二人は優しい顔で慰めている。元々自己否定感が強かった彼女だ。今回のことで再び自分の無力さを味わい、自分を責めるようになっていた。そのため、アデライドとレネがミーナに向けた言葉は彼女を救う。心が温かくなるのを感じた。

 エルシニアのときといい、彼女は話を聞いてくれる友人の存在がどれほど素晴らしいものであるかを改めて実感している。

――そうか、これだ。

 今まで自分の感情で精一杯だったため、ミーナはヴィオルドに正面から向き合ってこなかった。彼の言葉に耳を傾け、痛みや苦しみ、もちろん楽しいことも共有するべきだった。それがこの前彼女が思わず口にした「友達」というものではないだろうか。

 たとえ罵られようとも、もうヴィオルドの隣に並ぶ資格がなかったとしても、それでもミーナは今度こそ自分のためではなく彼のために何かしたいと決心した。