見慣れないカーテンの隙間から、白金の朝日が差し込む。光を浴びても昨夜の切なさは溶けなかった。ミーナはあまり眠れず、一時的に浅い睡眠を取れただけ。彼女は瞼をこすり、腫れていることに気づく。

 しかし今の彼女にとって、それは大して重要なことではなかった。それよりも胸の苦しさの方が何倍も耐え難い。想い人に面と向かって自分を否定されたのだ。普通の精神状態でいられるわけがない。

 ミーナはゆっくりとベッドから起き上がり、顔を洗いに立った。酷い顔だ。鏡を見て彼女は思う。

 そんなとき、レネの軽やかな足音が聞こえてきた。彼は事情を知らない。今の状態を見られたくないと感じた彼女は、耳を澄ませて身構える。

 案の定、足音は部屋に近づき、すぐにノックの音が響いた。

「ミーナ、おはよー! 入ってもいい?」

 レネの明るい挨拶。ミーナとドアを一枚隔てたところで、彼は今朝知った友人の訪問に興奮して語らおうとする。

 一方、そんな状況ではない彼女は率直に答えた。

「ごめん、今は人に会う気分じゃなくて……」
「そっか。……アデルからミーナが着られそうな服借りてくるね。ドアの前に置いといてあげる」
「……ありがとうレネ」

 しばらくして、ミーナはドアの向こうでごそごそと動く気配を感じ取った。レネが服を置いてくれているのだろう。彼女はレネがいなくなったのを確認してから、ドアを開けて服を回収した。繊細なレースをあしらったドレスは、アデライドのセンスの良さを表している。

 ミーナはドレスに着替え、髪を整えた。時間が経ったのか瞼の腫れも治まり、幾分か気分が楽になった。同時にこのまま悲しみと切なさに耐えるだけで、何もせず一日を終わらせてしまうのが勿体ないという考えも芽生えていた。

 今日一日どうしたものかと彼女が考えていると、再びノックの音が聞こえた。

「私だ。空腹ならダイニングへ来るといい。ホットケーキを焼いたんだ」
「……行く!」

 アデライドの言葉でお腹がすいていることを思い出したミーナは、一瞬で表情を輝かせて勢いよくドアを開ける。どれだけ悲しみのどん底にいても、空腹は回避できない。

 レネも一緒にいたようで、笑顔で彼女を出迎えた。

「一緒にホットケーキ食べよ! もし言いたくなければ、ボクは何も聞かないよ?」
「食べましょ!」