しばらくするとキッチンの方からいい匂いがしてきた。
「いい匂い〜。お腹空いてきた」
さくらちゃんがそう呟いたら、
キッチンの八雲さんに聞こえてたみたいで、「もうすぐできるよ」って返事がきた。
私も「楽しみだなぁ」って呟いたら。
「………」
「……!」
こたつのなかで左手を握られて。
小指、薬指…って、順番に指を絡められた。
チラっと梓くんを見たら、
梓くんは、じっと私を見つめてた。
もう見慣れてきたと思ってたけど、
やっぱり梓くんに見つめられると、その瞳に吸い込まれてしまいそう…。
「梓、く…」
「できましたよ」
どんな顔すればいいんだろう、って思ってたら、
八雲さんが、カレーが盛り付けられたお皿を運んできた。
「梓さん、勝手に皿使ったけど、
スプーンとかどこ?」
「あー…出すわ」
梓くんは私の手を離して、キッチンの方へ行ってしまう。
……今、私、
梓くんに手を離されて、寂しいって思った…?
なんて、気のせい…だよね。



