学校に着くと、キヨマサ君が泣きそうな顔で走ってきた。



「…っ」



キヨマサ君が、マシンガントークしない。



「……ひーらぎさん」



そしてポロポロ泣き始めた。



「キヨマサ君…」



「……何もしてあげられなくて、ごめん…」



そう言いながらポロポロ、ポロポロ。

子供みたいな顔で泣いてる。



「…キヨマサ君。ありがとう。大丈夫。泣かなくていいよ。」


ハンカチを差し出した。



「…」


キヨマサ君がピタッと止まって差し出されたハンカチを見る。



「…?」








「…ッうぉおおおおお!!!!柊さんのハンカチ!ハンカチだぁぁぁあ!!!!…ハスハス、ハスハス…あー!!いい匂いするぅぅぅー!!!!ヤベェぇええ」





キヨマサ君が膝をついてハンカチを天に掲げている。





「…」




さっきまでの涙どこいった?




「…イケメン坊主の気狂い男子は私のハンカチを溺愛する」

また唯が恋愛小説のタイトル風に茶化してくる。

「うーん…ちょっと読んでみたいかもしれない!」

「いや、ないでしょ…」




「ダメだ、このままだと柊さんの匂いが逃げてしまう…ビニール袋…ビニール袋!」



キヨマサ君が校舎の中へと走っていく。



ハンカチ、あげるとは言ってないんだけど…?





呆然とキヨマサ君の背中を見送っていると、登校中の他の生徒が突然騒ぎ始めた。