開いているドアの外、廊下の方から先生の声が聞こえた。



「あら、いいの？長谷川さーん？」

足音が走り去っていく音が聞こえて、先生が中に入ってきた。


「…」


時山君は私の手から自分のそれをスッと離す。


「今ね、長谷川さんがドアの外にいたんだけど行っちゃったのよ。なんか用事だったかしら…」




…長谷川さん、聞いてたのかな。





「柊さん。」


時山君がまた、私の目をまっすぐ見ていた。




「…また改めて、ちゃんと言うから。」




保険の先生が「なに？何の話？」と聞いてくるのを無視して、時山君はまっすぐ私の目を見て離さない。



そのあまりのかっこよさに、私は何も言えずにゆっくり頷いた。