「えっと……。だい、じょうぶ?」


時山君が伺うように私に聞く。


「…うん。時山君のおかげ。時山君こそ、足…」



痛々しい脛。

真っ青に内出血して、腫れ上がってる。

あの時、鈍い音がした。

きっと骨折してる…。



「インハイっていつ?」


「…来週末。これじゃダメそうだね。ハハッ。」


時山君は困ったように笑う。








「…」








どうして、

笑えるの?


 




「…柊さん」






「…」








絶対悔しいはず。



最後のチャンスなのに。



3年間の集大成、まさかこんな終わり方するなんて思いもしなかったはず。








「…泣かないで。大丈夫だから。」


「…ッ」






そうだよ。私が泣いてどうするの。


泣きたいのは時山君の方。


泣くな……泣くな、私。



そう自分に言い聞かせても、時山君の気持ちを思うと胸が苦しくなって

ボロボロ溢れ出ては制服を濡らしていく。







「…時山君。ごめん。」








ごめん、なんて陳腐な言葉じゃ済まないのに。







「ごめん…ごめんね。」







バカみたいにそれしか言葉が出てこない。









「…違う」




時山君は私の目をまっすぐ見たまま首を横に振る。





「違うよ。柊さん。柊さんのせいじゃない。」




時山君が身体を起こす。

「…くっ、」

痛みに目を細めながら腕で身体を支えて何とか起き上がろうとする。



「えっ時山君、無理しな…

「俺がっ、」



時山君は強い口調で私の言葉を遮って、ベッドになんとか座ってから続けた。







「俺が、勝手に柊さんを守りたかったんだ。」







…時山君の目には迷いがない。