「はなせ、よ!!」

内田が時山君の顔面目掛けて裏拳をくらわした。

「!!」



まともに正面にくらってしまった時山君は、思い切り後ろにのけぞる。



「…!」



けど、肩を強く掴んだまま離さない。




時山君は大量の冷や汗をかきながら「フーッ、フーッ!」と息をして

鼻血を出した顔でもう一度内田を睨む。



「…おい、根岸!」


「お、…おう!」



呆然と見ていた根岸がバットを思い切り時山君の背中に叩きつける。


「ウッ!」


時山君がまた痛みに顔を歪める。


…でも内田を強く掴んだ手は離そうとしない。


それどころか、もう片方の手も伸ばして内田を引っ張った。



根岸はそんな時山君をどかそうと何度もバットを叩きつける。



時山君。


時山君、もういい。


もうやめて。死んじゃうよ…!



涙を流して眺めるしかできない自分に、どうしようもなく腹が立つ。




「あ"ー!!もー、しつけーな!分かったよ。お前にもあとでヤらせてやるからよ。な?黙ってそこで見てろよ!」



そう言って内田が時山君の手を払いのける。



「……せねぇ。」



時山君が、もう一度内田を掴んだ。



「あ?」


内田が振り返ると、時山君がゆっくりと身体を持ち上げて、震える右足をたてた。



「…ッ。」



もうとっくに限界を迎えてるはずの体を力いっぱい動かす時山君の気迫に、内田が声をなくす。




時山君は内田の体をグッと自分の方に向けさせて胸ぐらを掴んだ。










「……この人に、さわんなら……ゲホッ、…俺を、殺してからにしろ…!」