外から音楽室の重い扉が開く音。



瞬時に男の子たちの間に緊張が走る。




だれかが、息を切らして音楽室に入ってきたみたいだ。




誰?男の子?

お願い、助けて!




私が「ンー!!」とガムテープ越しに声を出すと、太田が慌てて近くにあった楽器の布カバーで私の口元を押さえる。




内田が小声で「おい」と根岸にアイコンタクトして、バットを持ってドア横にそっとついた。




…足音が近づいてくる。







ダメ…危ない



やっぱり来ちゃダメ…!




私の願いもむなしく

ドアは勢いよく開いてバットが直撃する音が響いた。




栗色の猫っ毛の男の子が床に倒れる。






「!」







時山君!?





「…う、…」


時山君が痛みに顔を歪めながら薄目で私を見た。


「…ひいら、ぎさ…」


続けて根岸がバットで時山君の腹部を殴った。


「グッ!」



時山君!

名前を呼ぼうとしても、「ンンー!!」としか言えない。


内田が時山君の横にしゃがんで鼻で笑った。


「ハッ。時山君じゃーん。…俺嫌いなんだよお前。人の良さそうな顔で色んなやつと仲良くしてヘラヘラ、ヘラヘラ。俺らのこと見下してかわいそうとか思ってんだろ?」

腰を上げてバットを振りかぶった。

「この、偽善者が!!」



ダメ、やめて…時山君!



そのまま脛を目掛けてバットを振り下ろした。





「~~~!!!!」


時山君が声にならない声をあげる。



「あーあ。時山君、もうすぐインハイだったよね?ざーんねん。これでおしまいだね。」



そう言って痛みで動けなくなってる時山君の体を蹴った。