食堂横の売店に着く。


柊さんの姿はない。



他の売店に行ったとか、トイレに行ったとか…


いや…違う。


呼ばれたんだ、誰かに。






「時山?」




血の気が引いた俺の顔を覗き込むように見るのは、


「…九条」



「どうしたの。そんなとこに突っ立って。」


九条は売店で買ったらしいイチゴミルクのパックを片手にいつも通りのポーカーフェイスで聞く。


「…柊さん見なかった?」


「彼女持ちの時山君が、美琴に何の用?」


「…」


九条の目は据わってる。


「やっぱいい。」


俺は目を反らして九条の横を抜け、ひとまずもう一つの売店を目指そうと足を向けた。





「特別教室棟」





俺は九条の声に振り返った。



「さっき。特別教室棟の方に行くの見た。」


「…ありがとう」



九条は何も言わず、心の奥底を見据えるような三白眼で俺を見送った。




特別教室棟。




前に柊さんと会ったのも、特別教室棟の階段だった。


柊さんは何の用だったんだろう?


普通に考えれば…トイレ?

昼休みの教室近くの女子トイレはいつも混んでるから、あり得る。


俺はあの時、気になることがあって…





嫌な予感が合わさって、大きな不安の塊になって俺を襲う。




俺はさらに足を速めて、特別教室棟の階段を3階まで駆け上がった。





人気のない廊下を走る。