男は容赦なく私を地面に転ばせて馬乗りになると、乱暴に私の顎をつかんだ。

他の二人も私の手や足を押さえる。


「手こずらせやがって…大人しくしてろ、よ!」


私の痛めた腕をガン!と殴る。

「あぁッ!!」


痛い!苦しい…!


「ヒューッ。いい声で鳴くじゃん」


何の躊躇もなく女を殴れるその神経に、『殺されるかもしれない』という恐怖がよぎった。

大丈夫、と過信していた少し前の自分自身を呪う。




男が「いい子にしてたらすぐ終わるからね…」と、私の制服の下に手を入れ始める



「い、嫌…!」



その時だった。









……コーンコン、コンコーン





近づいてくる、不規則に地面をこする金属音。





「ヘーイヘイヘイヘイ!そこで何してんだァ!?」





ハッと公園の入り口に目を向ける。



それと同時に猛スピードでこちらに向かって走りだす金属バットを持った男の子。




「てめぇらどたま吹っ飛ばすぞゴラァァァァ!!!!」





あれは、



…キヨマサ君!?





「「「!!」」」



身長の高いキヨマサ君のそのあまりの迫力に、男たちは私を押さえていた手を離して転がるように逃げ出す。



「逃がすかぁぁ!!おいお前ら!左からまわれぇ!!」


後ろからきていた同じく金属バットを持った坊主頭の子たちが「「「オー!!」」」と男らしい返事をして、逃げる男たちの倍ぐらい早いスピードで追いかけていく。


あっという間に男達を捕まえて地面に転がしてしまった。



そして、パトカーのサイレン。



「あ!ポリ来たぞ!お前らほどほどにな!」


キヨマサ君が叫ぶと、今まさにバットで殴ろうとしてた手を止めて「命拾いしたなぁ」と足蹴にしてる。



坊主頭に金属バット…きっとみんな、野球部だよね?
…喧嘩し慣れてる。



突然のことに呆然としている私の元に、キヨマサ君が息を切らして走ってくる。

ほぼない眉を少し下げて、心配そうに私の顔を覗き込んだ。



「柊さん!大丈夫!?」



「…」



お昼に聞いたとき『苦手だ』と思ったその明るい声が、

恐怖でカチカチになってた心にストン、と落ちた。



「…」



無意識に涙が落ちる。