「ハァッ!」


「…ッ!!」



「柊、中段蹴り1本!」


「押忍!!」



以前よりも熱心に指導してくれるようになったコーチが声を上げる。

「よーし今日はここまで!各自ストレッチ念入りになー!この調子で大会まで突っ走るぞ!」


「「「押忍!!」」」





「はぁー、柊の蹴り、重たー!」

唯一の女子の同期、川崎が崩れ落ちて道場の床にショートカットをくっつける。


「でも、すごいよ。前は秒で倒れてたのに、良い線いくようになった。川崎、やっぱりセンスある。」

私は川崎の隣に腰を下ろして足のストレッチを始めた。


「ははぁー!ありがたきお言葉ー!…はは。最後の大会前にこんな燃えるなんてね。もっと前からやっとけよって話だよね。」

川崎が自嘲気味に言った。


「フフ。いいんじゃない。浦高空手道部らしくて。」

「はは!確かに。」


「川崎はここが硬いからもっとほぐしたほうがいいよ」


私が寝転ぶ川崎の足を持ってねじる。


「あ、あ、ちょ、待って!柊!あー!!」


「おい川崎!変な声出すなバカ!」

男子の同期で空手道武イチ体格のいい尾上君が顔を真っ赤にして叫ぶ。


「え?もしかしてチン 「言わせねーよ!?」


どうやら下ネタを言おうとしたらしい川崎を尾上君が止めた。


…このコンビもそろそろくっついたらいいのに。