この田舎駅の東口には人気のない小さな踏切がある。


駅に急行電車は止まらない。







ゴォーーーー!!!!!





大きな音を立てて、煌々と光る急行電車が猛スピードで走り抜けていく。




「…っ」




こんなに電車を怖いと思ったのは初めてかもしれない。



…落ち着け、俺。



フー…と震える息を整える。




カンカンカンとけたたましく鳴っていた踏切が音を止めて、ゆっくりと遮断機を上げる。




「!」




踏切前にしゃがみ込む女の子の姿。




「由月!!」




俺の声にビクッと体を震わせて、ゆっくりと顔を上げた。




「…純…」





学校での大人びた姿からは想像もつかない、ボロボロ泣いて縮こまる姿は迷子になった幼い女の子のよう。


いやでも2年前の初めて会ったときのことを思い出す。




「……今から飛び込むって…なんだよ。死にたいって、何があったんだよ。」


「…」



由月はただ泣きじゃくるばかり。





カンカンカンカン……




踏切が警告音を鳴らして、ガタンッと遮断機を下ろす。






「…!」



由月の手首を見て目を見張った。


「おい、これ…なんだよこれ!」


由月の腕を引っ張る。



カッターでガリガリと切ったような切り傷。血が滲んでる。




「…う……うぅ……」




また由月の目からボロボロと涙がこぼれ落ちていく。