…
病室のドアが、
少しあいている。
「…あ、お構いなく〜。」
「……」
兄と、唯。
「…何してるの」
無表情の唯がスマホをこちらに向けていて、撮影中のライトがついている。
「…だから言ったじゃん、兄。美琴怒ってるよ。あれヤバイときの顔だよ。」
「これぐらいで屈してどうするんだ唯!美琴の大事なプロポーズの瞬間残しとかないともったいないだろ!」
「えぇ…でもなかなかエッチなキスシーンも撮れちゃったから編集しないと美琴に殺される」
「バカタレ!おま、絶対消すなよ?美琴の貴重なディープキ…ごぼぉ!!」
「…ナイスピッチン」
兄の顔面にオレンジを投げてクリーンヒットさせた私に唯が拍手した。
「唯……消さないと……消すよ?」
「あ、分かりました。」
何をとは言わなくても察する唯は、さすが幼馴染だ。



