「…ごめん、よくわからないんだけど……俺、なんかしちゃったってこと…?」



時山君が困惑した様子で背中をさすり、わたしを窺い見る。



全然うまく説明できそうにないわたしは首を横に振って、

とにかく心を落ち着けようと、胸に手を当てて息を吐いた。







さっきの時山君を思い出す。




まっすぐ言ってくれた言葉。



大事に返さなくちゃいけない。



誤魔化さずに、言わなくちゃいけない。






「……ごめんなさい。



時山君の気持ちには答えられない。」







時山君は言葉を飲み込んで、私に触れていた手をゆっくり離した。








「……私を待ってる人がいる。」








『……』














『……ちゃ…ん』






聞こえる






『…美琴ちゃん』





小さいけど、確かに聞こえる。





「時山君……ごめん。」




私は立ち上がって、耳を研ぎ澄ませてその声の方へとゆっくり歩き出した。