「……少し前にばあちゃんが死んじゃってさ。風呂場で足を滑らせて、突然の訃報だった。…寧々が産まれるのを楽しみにしてた。」




私に上着を着せるとそのまま腕の中に閉じ込めた。



「なんか…すごいなって思った。」


「…すごい?」


「うん。なんていうか…、こうやって繋がってくんだなって。」


彼の穏やかな心音が聞こえる。


「ずっと家族は今のままが良いと思ってた。
だから寧々が産まれるの…少し、怖かったんだ。
でもいざ産まれてみたらすっ…ごい嬉しくて、可愛くてさぁ。

一生懸命息吸って泣いてる寧々の動画見たら…泣けてきちゃって。

父さんにもばあちゃんにも会えなくなっちゃったけど…
小さな寧々にその血が流れてるんだと思ったら

あ、これでいいんだって思えた。

こうやって繋がっていくんだって。」


私の頭に頬を擦り寄せて、少し切ない声で続ける。


「同時に、俺はこのまま仕事に生きてって、いつか独りで死ぬんだって気付いた。…俺の遺伝子はここで止まるんだなって。
そしたらバスで1人揺られてることがすごく心細くなって、涙が止まんなくなった。」


あの時、バスの中で声を押し殺して泣いていた彼を今でも鮮明に思い出せる。