反射的に身体がビクッと跳ねて


私は目を見開いた。








「あ…」






今まさに唇を重ねようとしていたところを、無意識に時山君の胸を押して離れていた。







「…」






時山君のひどく傷ついた顔が目に映る。





「…ごめ…ん…」





自分でも何が起きたのか分からず、混乱したままからっぽな謝罪を呟いた。







私……今、なんで…?


なんで、急に『嫌だ』って…








「あー……」



時山君が私の手をそっと離した。



「いや…ごめん。まだ男に触られるの、怖いよね。俺気づかなくて……あー、ごめん。」



俯いて本当に申し訳なさそうに謝る時山君に、私は言葉が出ない。



…そうじゃない



「大丈夫。もう触らない。安心して」



そう言って手をあげて笑ってくれる。



「違う…そうじゃないの、」



私は首を振るんだけど、それ以上の言葉が出てこない。



「はー、ちょっと調子乗った。ホントごめん。お詫びにあったかいものでも奢らせてよ。あ、そうだ、お土産屋さんの横に売店あったよね。あそこ寄っていこう。」



時山君が、優しすぎる。



こんなに優しい素敵な人を目の前にして


私はさっき聞こえた声を何度も何度も反芻しては


胸が痛くて、苦しくて、


これまで時山君に感じてきた気持ちの何倍も心を乱されていた。