唯が少し口角を上げてこちらを見てる。



「…え!?」




心の声、漏れてた?

唯には時山くんのこと言ってなかった気がする。


「言わなくたって美琴が気にしてる人ぐらいわかるよ。何年幼馴染やってると思ってんの。」


「…」


バレてたと思うと急に恥ずかしい…。






130回を超えて、時山くん1人になった。


シャトルランの音階と、時山君のバッシュの音、呼吸の音だけが体育館に響く。


この辺になると結構なダッシュをしないと間に合わないけど、まだ難なくこなしてる。





「いけー!時山ー!」


「学年記録塗り替えられるぞ!」




みんなからの声援。


時山くんはそれに答えることなく集中して真剣な表情でダッシュを繰り返してる。




「時山…好きな人っていうか、気になる人はいるんだって。」


「えっ、」


「あんまり話せてないから分かんないけど、なんか気になるんだってさ。」


「そうなんだ…」


「その子に勝てるところがないから、シャトルラン学年トップ狙って自信つけたいって言ってた。」





時山くんが気になる人、か…


時山くんが勝てるところがないなんて


どんな人なんだろう。




「…」


「いや、何落ち込んでんの?喜ぶとこじゃねーの?」


「え?」


「美琴。お前さぁ…」




唯が呆れた様子で何か言いかけた時、体育館がワッ!!と沸いた。




「140超えたぞ!!」


「よし時山、いけるところまでやってみろ!」




音階はどんどん速くなっていく。




「ハッ、ハッ、ハッ、…」




時山くん、だいぶツラそう。





「今の学年一って野球部の日下部くん?」


「157回だって」


「いけー!!時山ぁー!!野球部に負けんなー!!」




みんなからの声援がとぶ。



私も心の中で応援する。





時山くん、がんばれ。


がんばれ、がんばれ…!






「153!もう少しだぞ時山!」







「……ッ!!」