さっきの大学生について少し考え込んでいると、時山君が私をじっと見ていることに気がつく。


「ん?」


「あ……いや……」


時山くんが口元を押さえて目を横に逸らした。


「…?」




時山君がボソッと呟いた。


「……可愛い。」





「え」



時山くんの顔が、みるみる赤くなっていく。


「…」


それに私もつられて、顔がどんどん上気していく。



「あーっ、なし!今の、なし!うん!行こう!」


時山君が後ろを向いて、なしなし!と言いながら手をパタパタした。




私も「う、うん」とつぶやいて熱くなった顔をパタパタとあおぎながら時山君についていく。




『服が』
…ってこと、だよね?


…あ。そういえば私も時山君の私服、初めて見るかも。



グレーパーカーにデニムジャケット、黒いパンツにスニーカー。



よく見かける格好だけど、とても似合ってる。



時山君はいつも唯といるから目立たないけど、スタイルがいい方だと思う。


陸部なだけあって細くてスラッとしてるし、こうして見ると足も長い。


よく唯と比べられて時山は普通!とかイジられてるけど全然そんなことない。


…やっぱり、かっこいい。


そう思うと、急に今日これからのことにドキドキしてくる。

どこ行くんだろう?




…あれ?

私、勝手にデートだと思い込んで今日来たけど…

『デートしよう』なんて一言も言われてない。


今日、この時間に来るように言われただけで。


どうしよう、もうデートのつもりで来ちゃったけど、どういう心持ちでいたらいいんだろう…。