バスを降りて駅に目を向ける。


平日のラッシュほどじゃないけど、それなりにごった返してる春寝駅。



待ち合わせ、ざっくり『駅』としか言ってなかったけど…

ちゃんと合流できるかな?

ちょっと不安になりながらキョロキョロして駅をさまよう。


どっかで止まって待ってた方がいいかな…



 

「ねぇ」

 



その声に振り返ると、




栗色の髪の時山くん




…とは似ても似つかない、つり目のちょっと悪そうな大学生。




「あ、やっぱり」




その大学生が久しぶり、とでも言いたげにラフな感じで近寄ってくる。



「…?」



誰だろう…



「え、覚えてない?あの柱のところで会ったことあるよね。」



…うーん?



私はその人の顔をまじまじと見て、記憶を呼び起こそうと試みる。





その時、グイッと腕を引っ張られた。


「!?」




反動で引っ張られた方に倒れて、その人の胸に寄りかかる。







…あ






「…彼女になにかご用ですか」






時山くんが私の肩を抱えながら大学生を睨んだ。






「あ?邪魔すんなよガキ。」


大学生が凄んで、時山君が私を庇うように前に立つ。


わ、ど、どうしよう。




2人が睨み合っていると、大学生が何かに気づいて時山君の顔を食い入るように見始めた。




「……あれ?…お前…」


「…?」




「おい!行くぞ!」



大学生の背後から声がする。

小さく舌打ちしてその人は何か言いたげにしながらも去っていった。



時山君と顔を見合わせて首を傾げた。


「ナンパ…?」


「…さあ…」


なんだったんだろう…?