「こんなとこで何してんの、美琴ちゃん。」









その人の言葉が

耳に…脳に、直接響く。








「…え?」









「おっさんが泣いてるよ。」









その人がそう言ってフッと笑うと、腕に抱えていた子猫を降ろした。


子猫は勢いよく座席に登り、そのまま電車の窓から外へと飛び出した。




「えっ!?危ない!」




慌ててすぐさま子猫が飛び出した車窓から外を見る。



…え?どこ行った?


まさか電車の下?


でも猫が飛び出していったのはホーム側。


ベンチの下や自販機横のゴミ箱の死角など、
くまなく探すけど、いない。




またピアスの人の方に視線を戻す。









「…」










…誰も、いない。







『まもなく発車します…』






アナウンスが響く車内には、
隣の車両にも、その奥の車両にも、
さらにその奥の奥の奥…

どこまでも、人がいなくて

もしかしてこの世界には

私1人しかいないんじゃないかと錯覚するほど静かだった。