「…あ」



いつかの三毛猫。


私の目の前でお座りしてる。



「…君、どうしてこんなところに?」



「ニャーン」



子猫は相変わらず好奇心旺盛な真ん丸な目をこちらに向けた。



次の瞬間



「…う…ッ、」



突然、激しい頭痛が私を襲った。


何かに殴られたような、ガンガンと響く激しい痛みに私は頭を押さえてその場に崩れ落ちた。




それと同時に頭の中に何かの映像が飛び込んでくる。














真っ暗な夜。


サイレンの音。


アスファルトに打ち付ける激しい雨が街灯に照らされている。


そこに投げ出された右腕は力なく横たわって雨に打たれるばかりで


地面に寝転ぶ私を目の前の大きな車が見下ろしている。


泥と血でぐちゃぐちゃになった子猫が鳴いている。


髪の短い私の顔に寄り添って、震えながら鳴いている。










「ニャー」



耳元で聞こえたその鳴き声を合図に、私は目を見開いた。







そこは相変わらずオレンジ色に染まった静かな車内。





頭痛はいつの間にか静まっていて、

子猫はそこにいなくて、

床に崩れ落ちたと思っていた私はしっかりと座席に座っていた。





夢を…見た?





どっちが夢か分からなくなるぐらいのリアルさは

いつかの寒い夜の映像や、あの人と歩く暖かい春の夢と同じだった。















「美琴ちゃん。」









人がいなかったはずの車両から


聞き覚えのある声がした。