「しっかりしろ…私。」



私はため息をついて終点で降り、折り返しの電車に乗車した。



車窓からまぶしいぐらいの夕陽が差し込んでいる。


つり革も、

頭上の明応大のポスターも、

擦り切れてくたびれた座席も、

そこにある全てにオレンジが足されて、今日が終わろうとしていることを教えてる。



私は誰もいない車両に一人、腰掛けた。







明日の朝9時…



明日は土曜日か。



…デートだよね?



どう考えても、デート。



デート…



時山君と



デート…





私はようやく現実味を帯びてきたその事実に焦り始める。




明日って、寝て起きて、明日…?



え、すぐじゃん。



…どうしよう。

どうしよう!

どうしたらいい?





もう駄目だと思ってた関係が急に進展して、こんなことになるなんて。

デート、という単語に突然キャパオーバーになって、一人で顔を覆って足をばたつかせた。





今日はもう勉強どころじゃない。

帰ったらもう夕飯の時間だけど、全然食欲がわかない。


どこに行くんだろう?

あ、服…服どうしよう。

デートに着ていけるような服なんて…





「ニャー」





私は顔を覆っていた手を外した。



「え?」




「ニャーン」





…電車の中に、子猫。