あ・・・れ・・・?
目が覚めると、横になっていて、体を起こさずに横をみると郡司さんが映画を観ていた。

あれ?私、寝ちゃった?
嘘。
最悪。
覚えてない・・・郡司さんが抱き締めてくれたことは・・・覚えてる。・・・きゃー。
恥ずかしいー。

で、そのまま寝ちゃったの?

・・・何やってんのー。

「目、覚めた?」

ゆっくりと体を起こす。

「はい。・・・ごめんなさい。私寝ちゃって・・・」

「いや、それは構わない」

「・・・昨日と反対ですね」

思わずクスリと笑った。

「だな。もうちょっと飲む?」

「あ、はい。飲みます」

「酒豪」

「ち、違いますー」

その後は、もう1本映画を2人で観て、眠りにつく予定だったけど、そのときに私の中で事件が起きた。

歯を磨いて寝室に入ろうとしたとき

「森下、どこ行くの?」

先に歯磨きを終えた郡司さんが、ソファーの上から話しかける。

「え、部屋に行って寝ますけど・・・」

「いや、森下は今日はこっちで」

「え?」

ちょ、なに言ってんのこの人。
ソファーをポンポンと叩いて、自分の隣に来いと言っているのがわかる。

「え?・・・ええ?いや、あの・・・それはちょっと」

躊躇していると悪戯っぽい顔で笑う。

「今日、俺がなんで森下のところに泊まることにしたのか、その理由がこれ」

すごく良い笑顔でポンポンしないで。

「泊まる理由?」

「うん。俺ここ最近眠れなかったんだよ。仕事忙しいってのもあるけど、眠ると変な夢見て目が覚めて眠れなくなる日が続いてて」

ああ、そういえば魘されてた。

「で、昨日の夜はなぜかゆっくり眠れたわけ。朝起きてその眠ることができたのは、森下のおかげだったって気がついた」

「はあ」

「で、今日もう一回試したい」

「あ、はい?」

「だから、森下、こっちきて」

だから、その笑顔やめて。

「・・・だめ?」

悲しそうに言わないで。
その顔はずるい。

「えっと・・・」

「なにもしない。約束する」

「・・・・わかりました」

「じゃあ、こっち」

笑顔で言う郡司さんと、顔がかなりひきつっている私。

やばい。ドキドキが止まらない。

ゆっくりと郡司さんのところに近づく。

「寝る場所どっちがいい?」

「ど、どちらでも」

考えるなんてできない。

「じゃあ、昨日と同じでいい?」

「はい」

「そんな、緊張しないでよ」

「しますよ!」

思わず少し声が大きくなった。

「ああ、そうだよな。ごめん。でも俺も緊張はしてる」

「え、そうなんですか?」

「そりゃそうだろ。・・・お前俺をなんだと思ってんだ?」

「いえ、な、なれてるのかなーって・・・おも・・・て」

「はー。傷つくわ」
首をがくりと落とす。

「え・・・あ・・・」

「言っとくけど、こんなこと頼んだの森下がはじめてだからな。・・・なんだよ、俺が誰とでも寝るとか思われてたなんて。がっかりだよ」

プイッ。と反対方向を向いて寝てしまった。

あ、あ、やだ。
怒らせた。
傷つけた。
ここまで、楽しくやってきたのに。
どうしよう。
どうしよう。

「ぐ、郡司さん。・・・・ごめ・・・なさい」

ぐすっ。
泣きたくなんてなかったのに。

私の異変に気がついたのか、こっちをみてビックリした起き上がった。

「ごめん」

優しく抱き締められた。

「ちょっとからかうつもりだっただけなのに。・・・今日は泣かせてばっかだな。ごめんな」

「ううっ」

頭を優しく撫でられていたかと思ったら、

「きゃっ」

横にごろんと寝転んだ。

「今日はこのまま寝ようぜ」

抱き締められたままの体制で、毛布をかけられる。

こ、このまま・・・?

少し体を離すと、テーブルにある電気のリモコンをとって、小さな明かりに切り替えた。

「あ、泣き止んだ」

にこっと笑う郡司さんが薄明かりの中みえた。

なにも言わずに、私は郡司さんの胸に顔を押し当てた。
そんな私を優しく包み込むように抱き締めて、2人ともなにも言わずに眠りについた。