「秋山さん。健斗のこと何か聞いてた？」
健斗の友達で、私も仲良くしている篠島竜馬は動揺する私の元へやってきた。
「何も…転校なんて健斗は一言も。」
「俺も。何も聞いてなかった。ショックだよなぁ大事な存在って思ってたのは俺たちだけだったのかなぁ。」
そう言いながら篠島くんは窓の外に目線を移した。
そうだよ。なんでそんな大事なこと、健斗は言わなかったのか。所詮私たちは健斗にとってその程度の存在だったんだ。と思い知らされる。
黙り込む私に篠島くんは優しく笑いかけてこう言った。
「そんな中にするなって。友達なんて健斗の他にたくさんいるだろ。俺も、そうだし。」
「うん…」
そうだよ。健斗の他に友達なんていくらでもいる。でも…
頭の中で、耳の奥で鳴り響くのは
「千紗」
「千紗のバーカ」
という健斗の声。
健斗に会いたい
今までそんなこと一度も思ったことがなかったのに。
どうして、私は健斗のことばかり思い出してしまうのだろう。