家に帰ると、キッチンに餅の欠片が山を成していた。
「……ああ、鏡開きか」
「うん、お義母さんにもらったの。おかきにして食べたら美味しいわよって」
「気をつけろよ」
油で米が揚がる良い匂いと、塩をふるパラパラという音。
晩酌のつまみになった。
「いただきます」
「今年も円満に、健康に過ごせますように」
妻が手を合わせて祈った後、こちらを見てはにかんだ。
「来年は三人だね」
「そうだな」
まだ目立たない妻のお腹に、つい視線をやってしまう。
「さすがに来年はまだ、おかき一緒に食べられないけどね」
「そりゃそうだ」
ふふ、と笑い合った。出会った頃の初々しい笑顔とは違う、母親の色がにじんだ大人の笑み。
どちらの彼女も、とても好きだ。