「何聴いてるの?」
話しかけてきたのは、席替えで隣になったばかりの女子。
「……え、〇OASOBIだけど」
「ああ、いいよねあれ。ボーカルの高音がすっごく」
「う、うん」
ぎこちない受け答えをしつつ、内心ドキドキしていた。邦楽オタクと呼ばれ、中学の頃から女子とまともに喋ったことなんてない。
「実はね、私もバンド組んで歌ってるの」
ひそひそと打ち明けられた秘密と、差し出されたイヤホン。
「聴いてみて?」
躊躇していると、右耳にイヤホンが差し込まれた。伸びやかな声と軽快な曲が鼓膜に響いてくる。
「い、いいんじゃない、結構」
「本当?」
にこっと笑った顔はとても無邪気で、太陽のように輝いて見えた。
初恋を自覚した瞬間だった。