「いらっしゃいませ……あら」
店に入ってきたのは常連の男子高校生。
「こんにちは」
「こんにちは。今日はケーキ? それともシュークリーム?」
「この、ニューヨークチーズケーキ2つください」
「ちょっと待ってね」
冷蔵ケースからケーキを取り出し、保冷剤と一緒に箱に詰める。
「保冷剤は1時間分だから、早めに冷蔵庫に入れてね」
いつもの注意と、いつもの「はい」。
会計を済ませて少年が帰った後、トレイに畳まれたメモ用紙があるのに気づく。あの子の忘れ物?
開いてみて、目を見張る。
『ずっと好きでした』──その下には携帯番号。
……まさか、私が目当てで通っていたの?
その日、残りの仕事時間は、ずっとふわふわドキドキしっぱなしだった。