「ん……っ」
 突然の行動に、反射的に固まった。
 ──なんで?
 頭の中に言葉がぐるぐると回る。
 なぜ、キスされているのか。
 相手は同僚で同期、営業成績で相争う間柄。
 ここは社内、備品倉庫。人気が無いとはいえ、いつ誰が入ってくるかわからない。
『企画の子に告白されたんだって?』
『誰に、そのこと』
『すごい噂よ。よかったじゃない、あんな美人に好かれて』
 そんな話を、からかい混じりにしていたら。壁に押し付けられて。
「──は、っ」
 さんざん口内をねぶられた後、やっと唇が離れる。
 ああ、この顔だ。彼がこんな顔をするから私は。
 ……気持ちに、気づいてしまった。
 私を置き去りにして、彼は去る。
 壁を背に、へたりこむことしかできなかった。