「…敵?」



琢真は、コクリと頷き、エレベーターの中から顔だけを出し、辺りを見回した。

が、しかし、人の気配は無かった。

強いていえば、美咲の血を嗅ぎ付けた、あの人間たちが、階段を使い、降りてくる音が遠くで聞こえた。



「…次で1階まで下りられるといいけどな。」



琢真がポツリと言ったのを、真紀は聞き逃さなかった。



「どういうこと?」


「いや、別に…。なんでもない。」


「…ほんとに?」


「あぁ。…もう行くぞ。奴らがそろそろ来る。」


「うん…」



真紀は、エレベーターの外に出された美咲の死体を見つめ、扉が閉まる瞬間に、



「ごめんね、美咲。」



と、呟くように言った。