琢真が頭を摩りながら、どうにか起き上がった。


「……っ!大丈夫ですか!?」


「……。」



男は完全に意識がなかった。



「やばいな…」



琢真は後ろに迫る人間達を見て、呟いた。

そして再び男を背負い、エレベーターに向かった。


唸り声がどんどん近づいて来るのが、嫌でも耳に伝わった。


琢真と人間達の距離は、あと2,3メートル程だ。

手を伸ばせば、捕まえられそうなくらい近い。



「琢真ぁ!」



真紀の叫び声が、琢真の心を焦らせる。



「ぅぅう…ぐがぁ…」



すぐ後ろで聞こえる唸り声で、足が震えて上手く動かせない。