男がそう言った瞬間、エレベーターと反対方向にある非常階段から、ガツン、ガツン、という階段を昇ってくる音と共に、うめき声が聞こえてきた。

真紀はチラリと階段を見て、琢真に向き直った。



「琢真!まさか…?」



すると琢真は、真紀に、



「何かあったら、すぐに逃げろ。」



と言って、慎重に階段へと向かった。

うめき声は次第に大きくなっていく。

真紀は心配そうに瞳を揺らして、琢真を見守った。


琢真が階段の前まで来た時、真紀は左手で、美咲の右手をギュッと握りしめた。

美咲も、ギュッと握り返してくれた。


琢真が、階段に更に近づいていき、下をヒョイと覗くと、途端に表情を変えた。



「真紀!逃げろ!」