「こうやってみんなで集まるのも久しぶりだな」

 嬉しそうに言った翔太は、なんだか浮かれているように見えた。翔太にしては珍しいそんな姿が、SSFのメンバーが揃うのが久しぶりだということを表していた。

 昨日の夜遅くから降り出した雨は、今日のお昼には上がって、屋上から見える遠くの街並みまでも鮮明に映し出していた。目に入る緑には雨露が陽の光に反射してキラキラと輝いていた。

 その景色を見ながらみんなの明るい声を聞くのも本当に久しぶりだった。

「ちょっとさ私も意固地になっていたから、あの時は蒼生の考えを上手く受け入れられなかったし」

「ひな子……うん、そうだよね」

「あ、柚と陸が来た! こっち、こっちー!」

 ひな子は屋上に上がって来た2人の姿を見つけると、高い背をさらに伸ばすように大きく手を振った。

「蒼生とはあれからどうなんだ?」

「え?」

 ひな子が2人に走り寄って行くのを見て、翔太は小声で言った。

「……」

 そうか、みんなは蒼生くんの病気のこと何も知らないんだ……。

 これは、私の口から言うものじゃないと思った。

「何も変わらないよ。私も蒼生くんも」

「そうか」

「……」

 それ以上を詮索しない。それも翔太っぽいと思った。そして、今はそれがすごく、ありがたかった。

 口にしてしまえば……蒼生くんの病気のことを深く考えてしまえば、心が壊れる。そう感じていたから。