ほとんどの学生が一人で歩いている中で、友達同士で集まって歩いている人たちもいた。そうはいっても就活生なだけあって、なんとなく緊張感のある雰囲気で、話声も周りにあまり聞こえない程度に抑えられている。
私を囲む大勢の学生たちについて、一人で様々な詮索をしていると、一際目立ったグループに出くわした。彼らは男女五人で仲良く談笑しながら歩いていて、話声だけ聞くとまるで就活生ではないように思えたが、全員私と同じように黒のスーツに纏われている。
会話が弾んでいる彼らの足取りは遅く、私は一気に彼らを追い抜こうと少しスピードを上げた。そのまま勢いにのって横を通過しようと思っていたところを、一番端を歩いていた男子の鞄が私の腕にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい」
反射的にそう謝ったが、どう考えても謝るべきは鞄を持っていた彼の方だった。
「あーいや、俺の方がごめんね」
会話の途中だったため少し笑いながら謝ってきた彼に会釈をして、今度こそ彼らの前方に行こうと足を動かそうとした時、謝罪をくれた彼の横にいる一人の学生に目がいった。
驚きと、感動と、そして喜びと——色んな感情が混ざり合ってうまく声が出せない。それでもなんとか振り絞って私は声帯を震わす。
「匠真——」
それは自分で聞いてもか細い声だた思った。あの時の匠真と同じくらい小さくて聞き取りづらい声。それでも手を伸ばせば触れられそうな距離にいる彼には届いたと思う。
私を囲む大勢の学生たちについて、一人で様々な詮索をしていると、一際目立ったグループに出くわした。彼らは男女五人で仲良く談笑しながら歩いていて、話声だけ聞くとまるで就活生ではないように思えたが、全員私と同じように黒のスーツに纏われている。
会話が弾んでいる彼らの足取りは遅く、私は一気に彼らを追い抜こうと少しスピードを上げた。そのまま勢いにのって横を通過しようと思っていたところを、一番端を歩いていた男子の鞄が私の腕にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい」
反射的にそう謝ったが、どう考えても謝るべきは鞄を持っていた彼の方だった。
「あーいや、俺の方がごめんね」
会話の途中だったため少し笑いながら謝ってきた彼に会釈をして、今度こそ彼らの前方に行こうと足を動かそうとした時、謝罪をくれた彼の横にいる一人の学生に目がいった。
驚きと、感動と、そして喜びと——色んな感情が混ざり合ってうまく声が出せない。それでもなんとか振り絞って私は声帯を震わす。
「匠真——」
それは自分で聞いてもか細い声だた思った。あの時の匠真と同じくらい小さくて聞き取りづらい声。それでも手を伸ばせば触れられそうな距離にいる彼には届いたと思う。