そう言ったベラは、笑っているがその裏側には大きな嘘を隠しているようにイヅナの瞳には映った。イヅナはベラの手を素早く包む。そして、思いを伝えるために口を開いた。

「今は、多くの人がベラさんのことを受け入れられず、ヴィンセントのような態度かもしれません。でも私は、ベラさんが来てくれたことが嬉しいです。理性を取り戻すことができて、一緒に戦えて、とても嬉しいです」

今はまだ、妖を救う薬も何もない。それでも希望は持っていたいと思い、イヅナはベラの手を包む自身の手に力を込める。

「ツヤさんならきっと、妖を人に戻す薬を作ることができると思います。だからどうか諦めないでください。せっかく理性を取り戻せたんですから、アレス騎士団の一員になったんですから!」

ベラの瞳が大きく揺れる。そして、イヅナの体はベラにいつの間にか抱き締められていた。

「ありがとう」

震えた小さな声にイヅナは微笑む。そして、肩を大きく振るわせて声を押し殺すベラをイヅナは背中に腕を回し、優しくさすった。