「あのっ…かお…顔を上げて下さいっ…」

周りの視線が突き刺さる様で恥ずかしい。

だって今こんなありえないシチュエーションで告白をされているのは、私でここは私の職場なのだから

白スーツに赤いネクタイをして、真っ赤な大きな薔薇の花束を持っているイケメン。目立たないはずないのだから…。

「ねー、ママー、あのあ兄ちゃんどうしてレジの前でしゃがんでるの?」
「シッ!あんまりじろじろ見ちゃいけません!」

だってここはスーパー。お客様は老若男女問わず。

そしてレジ前で商品を手に持っている私は、薔薇の花束と同じ色の真っ赤なエプロンを着けているスーパー店員なのである。

胸にはでかでかと「スマイルスーパー」と店名が印刷されている超ダサいエプロンは制服のひとつである。

現在時刻はちょうど十七時代で、夜ご飯の材料を買いに来た主婦や仕事帰りのサラリーマン学校帰りの学生などで溢れ
スーパーが一番混む時間帯である。

異様な雰囲気に包まれる中、私のレジからサーっと人の列は消えた。
その分違うレジへと人が流れていく。
同僚であるパートのおばちゃんの視線が痛い。