「昼間の仕事で充分食っていけるだろうが。 それにこの家は持ち家でお前が暮らす分には家賃はかからないだろう」
確かに。 冷蔵庫からお茶を取り出し、それを注ぐ。
コップの口をつけて一気に飲み干しリビングに座る兄を見ると、ビールの缶を開けて口に運んでいた。
’…今日私が夜のバイトあるって知っててお酒も飲まずにいたんだ…’
じろりとこちらを睨みつけられると、思わず肩がすくむ。 我が兄ながら美しいものに睨みつけられると、身震いがしてしまう。
「いつまでもここで暮らすつもりないし」
「な、なんだって?!」
つんと顔を背けると、兄は顔を真っ赤にしてビールの缶をテーブルに叩きつけた。
この家は数年前、兄が建てたばかり。
家族の為に十代からずっと働き続け、自分の会社を持ちやっと手に入れた借家ではないお家。
兄的には母も一緒に住むつもりで建てたのだろうが、その母はあっさりと九州に帰ってしまった。
なので今は私と兄の二人で暮らしている。 特別大きなお家ではないけれど、安心感のある居心地の良い家だ。



