ガサ、ゴソ、ガサ。
買い込んできたお菓子やドリンクを、窓から差し込む月明かりの中テーブルに並べる。

「遠足かよ」
呆れたような声。
「いいじゃない」
別に悪いことをしているとは思わない。

「一応職場だぞ」
「悪いの?」

こんな時間に会社に忍び込んでいることの方が問題だと思うけれど。

「大体、あなたはうちの職員なんですか?」
「当たり前だ。そうでないなら本当に不法侵入ってことになる」
確かに。

「で、君がこんな時間にここに来た理由は?」
「えっと・・・」

それにしても、随分上から目線だな。
もしかして偉い人かしら。

「失恋でもしたか?」
「違います」

そもそも恋愛自体したことがない。
私は男の人を好きになれないのかもって本気で思っているのに。
子供の頃から男勝りって言われ続けたし、かわいげがないとも言われてきた。
それでも大学時代にはおしゃれをして合コンにだって参加した。憧れの先輩に誘われてデートに出かけたこともあったけれど、自宅に連れて行かれ襲われそうになって一発殴って逃げ出した。
それ以来男の人を信用できなくて、男の子を好きになったこともない。

「大体男は女と見ればやることしか考えてなくて、女って言うだけで見下しているのよ」
お互い顔の見えない暗闇の中だからこそ、遠慮なく悪口を言った。

目の前の男性が、亭主関白な父さんと重なったし、芽衣ちゃんの気持ちにも気づかない鈍感な奏多さんとも重なっていた。
本当に、男って最低。そう叫びたい気分だった。