「そう」

「それで、スティールのことを考えてくれないかしら? もちろんエドガーのことがあったばかりで、申し訳ないけれど、フローラさんを傷つけたことはお詫びします。本当に図々しいお願いだと思っている。けれど、このまま契約解消になったら計画がすべてが水の泡になってしまうわ。だからどうかお願いします」

 エリザベスはテーブルに頭をこすり付けんばかりに何度も頭を下げる。
 気持ちはわかるわ。
 二人の結婚まで一年を切っていたし、結婚後の本格的な始動のために着々と準備は進められていたものね。

「エドガーさんはどうするの?」

「あの子は廃嫡して、スティールに後を継がせようと思っているの。わたしたちはフローラさんとの結婚はスティールを望んでいたでしょう? だから、これを機に元に戻せないかと思って」

 エリザベスは一縷の望みをスティールに託しているのでしょう。
 わたくしもそう思っていたから、随分と主人にも話をしたけれども、聞き入れられなかったのよね。
 男ってなんであんなに嫡男にこだわるのかしら? 

 エドガーは自信過剰が故の傲慢さが見え隠れしていて好きになれなかったのよね。人前ではそつなくやっているように見えても、隠しきれないものがあるのね。きれいな顔をしているのに、時々感じる人を見下げるような冷たい目が気になっていた。