「メルヘンの世界ね。それとも妖精の世界かしら」

 ディアナのうっとりとした声が聞こえました。
 メルヘン? 妖精? 
 私はリッキー様と王太子妃殿下それからマロンを見つめました。その通りかもしれません。見目麗しきお二方と美子猫。この世のものではないと思っても過言ではありませんものね。絵画に残してほしいくらいです。私もものすごく美化して描いて頂いたらその一員になれるかしら?

 パンッパンッ

 夢の世界に浸っていたら手をたたく小気味のいい音が聞こえて、一気に現実へと引き戻されました。

「さあ、続きは部屋に戻ってからにしましょう」

 王妃陛下の声が高らかに響きます。

「そうね。レイニーに早く出て行けと言われたんだったわ。帰りましょう」

 ディアナ。ちょっと嫌味が入っていますよ。
 レイ様は青筋を立てて苦虫を嚙み潰したような顔をしています。よほどご迷惑だったのでしょう。私も早くお暇しなくては。
 
「リッキー様、マロン。帰りますよ」

 声をかけて、リッキー様を膝から下ろしました。

「もう、終わり?」

 リッキー様はちょっと不満そうに口を尖らせましたが、王太子妃殿下が何事か耳打ちをされたら納得されたようです。
 私たちは帰る準備をします。