婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「フローラちゃんはわたくしが招待したお客様ですよ。レイニー、あなたには何の関係もないわ。それなのに勝手に会場から連れ去っておいてその言い草は何ですか」

 今度は王妃陛下が腰に手を当て怒っていらっしゃいます。
 厳密にいえば会場外だったのですけれど、と言ってもよけいなことだと言われそうです。何が何だか分からなくなりました。どうしましょう。

「だから、さっきも言いましたよね。マロンを助けるために怪我をしたかもしれないローラの足の治療をするために連れてきたんだと」

「はい。それは聞きました」

 えっ、えっ……えー。
 あの、あの。
 木に登ったこととか話しちゃったんですね。王妃陛下方だけではなく、護衛の方たちも聞いてしまったのですよね。恥ずかしい醜態を皆さんに聞かれたなんて、今度は深い深い穴を掘って中に入りたい気持ちです。できれば冬眠したいくらいです。

「それで、治療も終わったのでしょう? だったら、連れて帰ります」

「このあとは俺が責任をもって帰しますから、それでいいでしょう」

「まあ、そんな理屈は通りませんよ。招待客の責任はわたくしにありますからね。そんな勝手は許されませんからね。そんなに離れたくないのなら自分で招待状を出すことね」

 私が恥ずかしさで見悶えている間に、さらに親子の間にブリザードが吹き荒れていました。