婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「あら、いいんじゃないの。本人が許可したのならそう呼んでおあげなさいな。大丈夫よ、気にしなくても。不敬だなんて誰も思わないわ。わたしだって王妃陛下はローズ様、王太子妃殿下はアンジェラだし、王子たちも呼び捨てよ、これはお互い様ね」

 私の意見はあっけなく一蹴されて、ディアナからウィンクつきであっさりと了承されてしまいました。
 王族の血を引き、国王陛下ご夫妻から可愛がられているディアナとはだいぶ立場が違いますけれど。
 本人が良ければよいと理屈はわかりますが、それっていいのでしょうか。がっかりしたようなホッとしたような複雑な気持ちです。
 
「ディアナ様、どうぞ」

 エルザたちがお茶を運んできました。

「ありがとう」

 ディアナが向かいのソファに腰かけたと同時に、隣の部屋からレイ様が入ってきました。
 王妃陛下方とのお話は終わったのかしら?

 何やら不穏な空気を漂わせてつかつかと歩いてきたと思ったらディアナの横で仁王立ちして

「ローラに会ったから安心しただろう。ディアナもう帰っていいぞ。ついでにあの二人も連れていってくれ」

 レイ様は迷惑そうに言い放つと開け放たれた扉を見やりました。
 つられるように見た私の瞳に、隣の部屋からこちらを覗く王妃陛下と王太子妃殿下のお二人の姿が映っていました。