「ぐっすり眠っているみたいね。リチャードって人見知りするタイプなのに、初対面の人相手にこんなに懐くなんてありえないわ」

「そうなの?」

 リッキー様が人見知りとはまったく気づきませんでした。初めから打ち解けてくれてたような気がします。かわいがっている子猫を助けたから、マロン効果なのかしら。

「きっと、一目でフローラのこと気に入ったのね。わたしと一緒だわ」

 ディアナはリッキー様のほっぺたを人差し指でツンツンとつついています。ふっくらとした頬はマシュマロみたいで柔らかそうですけど。触りたい気持ちもわかりますけど。

「リッキー様が起きちゃいますよ」

 何度もつついちゃうから、リッキー様のお口がムニュムニュ動いてむずがゆそうにしています。

「リッキー様って、もしかしてリチャードのこと?」

「そうだけど、ダメだったかしら? ご本人からの要望だったのでそうお呼びしたのだけれど。レイニー王子殿下をレイ様とお呼びするのも、やっぱりダメよね。不敬に当たるわよね」

 王族の方に気安く愛称で呼ぶのは私には荷が重すぎるので、できれば失礼だ不敬だと叱ってくれないかしら。そうすればすぐに止めるのに……距離は置いといた方がよいでしょうから、そんな期待も込めて聞いてみました。

「……レイ様?」

 小さく呟くと、ディアナは瞳が零れ落ちるのではないかと思うくらい大きく目を見開いて私をまじまじと見た後、フッと不敵な笑みを浮かべました。