レイ様は立ち上がると扉の奥へと消えました。

 ディアナのほかに、王妃陛下と王太子妃殿下までご一緒とは、何があったのでしょう。
 レイ様に用事があるのか、それとも……
 お二人がここにいらっしゃるということはガーデンパーティーも終わったのですよね。帰りのご挨拶もできなかったことになるわ。

 ガーデンパーティーの時は、薔薇のアーチの入退場口で王妃陛下が帰りのお見送りをしてくださいます。王妃陛下からお言葉を頂いて帰路に着くというのが慣例です。ですから、その慣例を破ってしまったことになります。

 西の宮にいると聞きつけて私を叱りつけに来られたのかしら? それならば無作法をしたことを謝らなければ……
 招待客が王妃陛下に礼に欠けたことをしてしまったのだから、許してくださるのかわからないけれどここは誠心誠意、謝罪しようと腹をくくり緊張しつつ、ドキドキしつつ、ドアが開くのを待っていました。

「フローラ?」

 ほどなくしてちょっとずつ扉が開かれ、恐る恐る姿を見せたのはディアナでした。ソファに座る私を見つけると、半信半疑な様子でこわばっていた顔が見る見るうちに明るくなりました。

「よかったわ。無事で。いつの間にか会場からいなくなるのですもの。随分探したわ。ローズ様たちと捜索願いを出そうかと話していたところだったのよ」